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令和5年度税制改正大綱による
電子帳簿保存法の改正点

2023.3.31

法制度対応

電子帳簿保存法 令和5年度税制改正大綱
令和5年度の税制改正大綱では、納税環境の整備を進める一環として、電子帳簿保存制度の見直しが検討されています。「電子帳簿保存法」とは、国税関係帳簿書類をデジタル化する場合の、保存義務や保存方法について定めた法律です。令和5年度税制改正大綱における主な変更点として、以下の3点が挙げられます。

・優良な電子帳簿の範囲の見直し
・国税関係書類に係るスキャナ保存についての見直し
・電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の見直し



本記事では、上記の令和5年度税制改正大綱による電子帳簿保存法の改正点について解説します。帳簿書類を適切にデータ保存するためにも、企業が今後対応すべきポイントをご確認ください。

目次

令和5年度税制改正大綱による「電子帳簿等保存制度」改正内容

初めに、令和5年度税制改正大綱のうち「電子帳簿等保存制度」の改正内容について解説します。
令和5年度税制改正大綱による「電子帳簿等保存制度」改正内容
こちらの改正内容では、「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」における、優良帳簿の範囲が見直されています。改正後の範囲は、令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税から適用となります。

「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」とは、一定の要件を満たした優良帳簿の記載事項に申告漏れがあった場合、申告漏れに対して課される過少申告加算税が、5%軽減される制度を指します。この優良帳簿の範囲を見直し、合理的かつ明確にすることが改正の目的です。その背景として、従来の制度では優良帳簿の要件が厳しく、多くの企業で対応が難しかったことが挙げられます。

要件緩和前の優良帳簿では、「訂正・削除履歴の確保」「相互関連性の確保」「関係書類等の備付け」「見読可能性の確保」「検索機能の確保」という5つの要件を全て満たさなければなりませんでした。これにより電子保存された帳簿書類の真実性や可視性が担保されますが、企業にとっては要件を満たすハードルが高い状態だといえます。この点が優良帳簿の要件への対応が遅れた要因だと推測されており、今回の改正で要件が緩和されたと考えられています。改正により保存が必要な帳簿の範囲が限定され、より対応しやすくなりました。

以下は、総務省が公表する「令和5年度税制改正の大綱(令和4年12月23日閣議決定)」の資料からの引用です。改正後に保存が必要となる帳簿書類の種類を、一覧でご確認ください。

① 仕訳帳
② 総勘定元帳
③ 次に掲げる事項(申告所得税に係る優良な電子帳簿にあっては、ニに掲げる事項を除く。)の記載に係る上記①及び②以外の帳簿
イ 手形(融通手形を除く。)上の債権債務に関する事項
ロ 売掛金(未収加工料その他売掛金と同様の性質を有するものを含む。)その他債権に関する事項(当座預金の預入れ及び引出しに関する事項を除く。)
ハ 買掛金(未払加工料その他買掛金と同様の性質を有するものを含む。)その他債務に関する事項
ニ 有価証券(商品であるものを除く。)に関する事項
ホ 減価償却資産に関する事項
ヘ 繰延資産に関する事項
ト 売上げ(加工その他の役務の給付その他売上げと同様の性質を有するもの等を含む。)その他収入に関する事項
チ 仕入れその他経費又は費用(法人税に係る優良な電子帳簿にあっては、賃金、給料手当、法定福利費及び厚生費を除く。)に関する事項

引用:「令和5年度税制改正の大綱(令和4年12月23日閣議決定)」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/ichiran04.html

令和5年度税制改正大綱「スキャナ保存制度」改正内容

続いて、令和5年度税制改正大綱における「スキャナ保存制度」の改正内容について解説します。スキャナ保存制度では、一定の要件を満たすことにより、紙で受領した帳簿書類のスキャナ保存が認められています。改正後は、以下の3点の要件が廃止されました。こちらが適用されるのは、令和6年1月1日以後に保存が行われる国税関係書類からです。
令和5年度税制改正大綱「スキャナ保存制度」改正内容

国税関係書類に係る記録事項の入力者等に関する情報の確認要件の廃止

従来のスキャナ保存制度では、帳簿書類をスキャナ保存する際に、入力者・確認者・監督者の情報も併せて確認できる状態にする必要がありました。以降は要件が緩和され、管理者の情報の保存が不要となります。改正により、スキャナ保存に関する管理の手間が減り、企業が対応しやすくなりました。

解像度・階調・大きさに関する情報の保存要件の廃止

従来のスキャナ保存制度では、スキャナで読み取ったデータの解像度・階調・大きさに詳細な要件が設けられています。たとえば、「解像度200dpi以上」「256階調以上のカラー画像」「大きさに関する情報の保存」などの要件を満たすことが必須でした。改正後のスキャナ保存制度では、上記の保存要件が廃止となります。

相互関連性要件について、帳簿との関連性に関する確認書類を重要書類のみに限定

従来のスキャナ保存制度では、スキャナ保存した国税関係書類のデータと、帳簿書類との関係性について、相互に確認できる状態にしておくことが要件とされていました。改正後は、重要書類のみが上記の対象となり、一般書類では対応が不要となります。重要書類に該当するのは、契約書・納品書・請求書・領収書等です。

令和5年度税制改正大綱による「電子取引に係る電子データの保存制度」改正内容

最後に、令和5年度税制改正大綱における「電子取引に係る電子データの保存制度」の改正内容を解説します。現行の制度では、電磁的記録(電子取引データ)の保存要件が設けられていましたが、改正後は一定の条件を満たした対象者に限り、検索要件が不要となりました。また、従来の保存要件に対する経過措置は、令和5年12月31日で廃止されます。改正後の保存要件に従うのが難しい事業者に対して、猶予措置が講じられた点もご確認ください。
令和5年度税制改正大綱による「電子取引に係る電子データの保存制度」改正内容

検索要件の廃止

改正により、電子取引データの保存要件が見直され、検索要件が不要となる場合があります。その条件は、国税庁などの職員の求めに応じて、電磁的記録のダウンロードに対応できる状態になっていることです。以下の①および②に該当する場合に対象者となります。

①判定期間における売上高が5,000万円以下である保存義務者
②電磁的記録の出力書面の提示または提出の求めに応じることができるようにしている保存義務者


①に関して、従来は売上高1,000万円以下が対象者とされていましたが、改正後は5,000万円以下に引き上げられました。②に関しては、出力された書面が整然とした形式および明瞭な状態であることや、取引年月日や取引先ごとに整理されていることも条件となっているため、併せてご確認ください。上記の対象者に当てはまるのであれば、電子取引データを保存する際、従来の検索要件は不要となります。

 

猶予措置の実施

改正後の電子取引データの保存要件に従うのが難しい事業者に対して、猶予措置が講じられます。従来の宥恕(ゆうじょ)措置は令和5年12月31日で廃止となり、令和6年1月1日以降は新たに猶予措置が適用されます。現行の電子帳簿保存法では、電子保存の義務化にともなう経過措置として、2年間の宥恕期間が設けられていました。しかし、期間内での対応が困難な企業が多い背景から、今回の猶予措置が講じられたと考えられています。猶予措置を受けられるのは、以下の2つの条件に該当する事業者です。

①納税地等の所轄税務署長が、当該電子取引の取引情報にかかわる電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかった、「相当の理由」があると認める場合
②当該保存義務者が、質問検査権に基づく当該電磁的記録のダウンロードの求めと、当該電磁的記録の出力書面の提示または提出の求めに応じることができるようにしている場合


ただし、①の条件における「相当の理由」の詳細については、まだ発表されていません。具体的にどのようなケースが該当するのか、詳しくは2023年6月頃に正式に発表されると予測されているため、改めて最新情報をチェックするようおすすめします。

 

■電子データ保存の緩和措置 対応表

電子データ保存 緩和措置
対象期間年間売上高 ①検索要件 ②紙保存での管理
5,000万円超 対応必要 容認
※但し、電子保管対応ができないことに相当の理由があること(相当な理由については詳細は明らかになっておりません)
※税務調査の際に、電子データを渡せる状態で保存している事
5,000万円以下 対応不要
※但し、出力書面が整然かつ明瞭な状態で、取引年月日や取引先ごとに整理されていること
※税務調査等の際にデータのダウンロードに応じることができる場合

令和5年度税制改正大綱で改正される電子帳簿保存法の要点をチェック

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