在宅勤務が大企業で進む。中堅・中小はどうか

在宅勤務が大企業で進む。中堅・中小はどうか

トヨタ自動車、リクルートホールディングス、カゴメといった誰もが知っている大企業が在宅勤務を導入したニュースを目にする機会が増えました。安倍内閣の働き方改革推進の方針もあり、官民問わず、在宅勤務導入の機運が高まっています。在宅勤務に欠かせないのがテレワークです。テレワークは、ITを活用して時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を可能にします。

文=山崎 俊明
IT関連誌やWeb媒体にて、ネットワーク、セキュリティ、通信キャリア、クラウドなどのIT記事を多数、取材・執筆している。国内外のITベンダーのソリューションに詳しい。

テレワーク導入の目的を明確化

テレワークは企業、従業員のそれぞれにメリットがあります。企業にとっては、柔軟な働き方が可能になれば、有能・多様な人材の確保と流出の防止が見込めます。災害時の事業継続計画(BCP)対策、時間の有効活用による業務効率の向上、オフィススペースや通勤コストの削減も効果として挙げられます。従業員にとっては、育児・介護といったライフイベントがあっても安心して働けるようになります。家族と過ごす時間や自己啓発の時間が増えるといったメリットもあります。

テレワークを検討する企業は、何のために導入するのか、目的を明確にする必要があります。テレワークの導入に当たっては、「(1)導入の検討と経営判断(導入目的、基本方針の策定)(2)現状把握(テレワークに関する就業規則や人事評価制度など)(3)導入に向けた具体策(社内ルールづくり、情報通信システムの活用によるテレワーク環境の整備など)(4)試行導入と効果測定(課題の洗い出しなど)(5)本格導入」といった手順が踏まれます。概要はテレワーク相談センター(厚生労働省委託事業)のホームページに紹介されているので、これからテレワーク導入を検討する企業は参考にするといいでしょう。

中堅中小企業でもテレワークは活用されるか

厚生労働省ではテレワークの活用により、ワーク・ライフ・バランスの実現を図る企業を表彰する「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」を実施しています。平成28年度の優秀賞は、ネスレ日本でした。特別奨励賞は沖ワークウェルやダンクソフト、日本オラクルの3社が受賞しました。優秀賞を受賞したネスレ日本の場合、2016年1月から全社員を対象に導入した「フレキシブルワーキング制度」など、生産性向上の取り組みが評価されました。フレキシブルワーキング制度は、社員自身が働く場所や時間を自由に選べる制度です。

このように大企業ではテレワークを活用した在宅勤務の導入が進んでいます。中堅・中小企業での実情はどうでしょうか。そもそも人手不足の度合いは、大企業に比べても顕著です。また、テレワークなどの施策を実行しようとしても、投入できる経営資源が限られます。現状では大企業に比べると、中堅・中小企業の在宅勤務活用の進みは遅いといわざるを得ないでしょう。

中堅・中小企業の強みは、強固な専門性がない場合、多くはフットワークのよさで対応してきました。大企業が大人数の決裁をあおいでいる間に、中堅・中小企業では社長のハンコ一発で時間を短縮し、スピードで勝負してきたわけです。いつでも素早く対応できるというのは、裏を返せば働いている拘束時間が長いということになります。本来は、中堅・中小企業こそテレワークを推進して、優秀な人材を確保したり、業務を効率化したりする必要性に迫られているといえます。

実は、中堅・中小企業でもテレワークに取り組んでいるケースはあります。厚生労働省の「平成27年度 テレワーク活用の好事例集」にさまざまな取り組みが紹介されています。

例えば、特許・技術文献の調査を受託しているアズテック(従業員数36人、2015年10月時点)では、テレワーク導入により「結婚、妊娠・出産、子育てや介護等で退職や長期離脱を余儀なくされる従業員が、テレワークを利用することで継続就業が可能」になりました。自宅や介護先、転居先でも仕事ができる環境を整え、従業員が長期離脱することなく働けるようになりました。退職による人材の流出だけでなく、全国の優秀な人材を獲得できるようになったといいます。

また、サービス業のシータス&ゼネラルプレス(従業員数203人、2015年10月時点)では、「組織全体の生産性向上と優秀な人材の確保・雇用継続を目的に」試験的にテレワークを導入しました。「導入の目的を丁寧に説明し、福利厚生が主目的の制度として認識されないよう工夫」したといいます。ワーク・ライフ・バランスの向上だけでなく、業務内容の整理が進んだ効果もありました。2015年10月から「在宅勤務制度」を正式に導入しています。

在宅勤務に欠かせないIT環境の整備

大企業、中堅・中小企業にかかわらず、テレワークに欠かせないのが、どこからでも、どんなデバイスからでも社内の情報を共有・交換できるIT環境の整備です。業務ファイルを安全に保管・共有・管理できるクラウド型のコンテンツプラットフォームを活用すれば、複数のメンバーでファイルを共有しながら共同作業が行えます。時間や場所に制約されることなく、業務の効率化が可能になります。

在宅勤務制度の導入を検討する際は、ファイル共有などIT環境の見直しも欠かせません。従業員が扱いやすくセキュアな情報基盤づくりも併せて検討してみてください。ITが多様な働き方を支える一助となれば幸いです。

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